トランプ大統領が誕生して7ヶ月近くが経過していますが、トランプ政権を取り巻く環境は厳しさを増しています。トランプリスクやトランプショックと表現されるような事態が実際に発生するのか、発生した場合の影響等を詳しく解説していきたいと思います。
まずトランプ大統領を発足以降の主たる騒動を振り返りたいと思います。

 

1.中東・アフリカ7カ国からの入国制限

2017年1月27日にトランプ大統領は中東およびアフリカの特定7カ国の国民を米国に入国することを禁ずる大統領令に署名をしました。アメリカ国民をテロから守る言う名目のもとにこの大統領令に署名を行いましたが国内外で大きな波紋を広げましたが結果的にシアトル連邦地裁やサンフランシスコ連邦高裁などにおいて大統領令での一時差し止めが決定されました。

 

2.トランプ大統領の側近、フリン大統領補佐官の辞任

トランプ大統領の側近であるマイケル・フリン氏が就任前にロシア大使と複数回にわたり、対ロシアに対する経済制裁に対する協議を行ったことが明らかに2月13日に辞任に追い込まれました。これは民間人が外交交渉に介入するのを禁じる法律に違反したためであり、問題発覚後直後はトランプ大統領も同士を擁護していましたが、こうした交渉はしていないという虚偽の報告をホワイトハウスに行っていたため、結果的に更迭されたものです。

 

3.オバマケア代替法案の採決断念

オバマケア法案の廃止と代替制度「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」をアメリカ議会下院で採決を行う予定でしたが、可決される見込みがないことから採決直前の3月24日にトランプ大統領は採決の断念を判断する結果となりました。
現時点ではまだこの出来事により大きな混乱は起きていませんが、今後のトランプ政権の動向を占う上で極めて大きな出来事といえると想われます。
オバマケアの廃案と代替制度の導入はトランプ氏が所属する共和党にそもそも異論がない方向性でしたが、結果的に共和党内部の反対で可決できないという事態になっており、今後の重要法案を可決できていくのか極めて不透明であると言えます。
トランプ氏の公約実現には、立法を司る議会に協力が必須であり、トランプ政権は共和党を説得していく必要があります。トランプ氏がそもそも共和党の主流はではないため起きている問題とも言えますが、今後もトランプ政権が共和党との調整をうまくこなせない場合には、掲げる多くの公約が実現できない可能性も出てきます。
 

4.シリアへの軍事介入

シリアがシリア国民に対し化学兵器を利用した攻撃を行ったことが明らかとなりトランプ大統領がシリア空軍の基地にミサイル攻撃を行いました。これまでトランプ大統領は米国第一主義を掲げ国外の紛争への介入に対して懐疑的であったことの矛盾も大きな波紋を広げました。またこの攻撃が中国の周金平主席との会談中に行われていたことも中国政府の牽制と言う意味で大きな衝撃を与えました。

 

5.北朝鮮近辺での空母派遣

北朝鮮の相次ぐミサイル発射実験や核兵器開発に対しトランプ大統領は原子力空母を北朝鮮周辺に派遣する決断を行いました。北朝鮮の朝鮮人民軍の創立85周年にあたる4月25日に北朝鮮が核実験に踏み切り、米国が軍事行動に踏み切るのではという緊張が世界に走りました。

 

6.FBIのコーミー長官の解任

5月9日突然、トランプ大統領がFBIのコミー長官を解任したと発表した。トランプ氏はアメリカ大統領選挙の選挙期間中からロシア政府の支援を受けていたのではないかという疑惑が付きまとっていました。実際、アメリカ大統領選挙で競い合ったクリントン候補に不利な情報が同人からのハッキングにより流出するなどの問題が起きていました。またトランプ大統領がビジネス界出身であることからロシアとの経済的なつながり対する懸念も問題視されてきました。この問題についてはトランプ氏が大統領に就任した後も連邦捜査局(FBI)によって捜査が続けられてきましたがトランプ氏がこうした捜査を中止するように求めたり、トランプ氏自身の忠誠を求めるなど、捜査機関への介入が取り出され、過去に大統領職を辞任したニクソン氏と比較する論評も見られています。

 

7.イスラム国に関する機密情報をロシアに漏洩か?

FBIのコミー長官の解任と言うニュースから間もない5月15日にはトランプ大統領が5月10日にホワイトハウスでロシア外相や駐米大使との会談において、アメリカの同盟国から受け取ったイスラム国の機密情報を情報を提供元の同盟国からの許可を得ることなく開示したと言う問題が発覚しています。

 

8.気候変動に関するパリ協定からの離脱

世界200の国や地域が参加するパリ協定からの離脱を6月2日に表明しました。トランプ氏は地球温暖化そのものを否定しており、自然科学への予算大幅削減など科学分野を軽視する動きを顕著にしています。

トランプ氏はアメリカでの雇用増大を目指し、重化学分野の経済対策として温暖化対策を邪魔者扱いしているというのが本音と言えるでしょう。

今回の動きに対し、カリフォルニア州、ニューヨーク州、ワシントン州の州知事は州政府が独自にパリ協定を推進するともしており、米国内の分断化ここでもあらわになっています。

 

9.ロシア疑惑でトランプ氏の長男を調査へ 

大統領選挙中の2016年6月にトランプ大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏がロシア人弁護士と、クリントン候補に不利な情報を得るため接触していたと報道されました。米大統領選干渉疑惑を調べる上院情報特別委員会が同士からヒアリングを実施するとしています。

また、その後、ロシア人弁護士がロシア連邦保安局(FSB)の代理人であったことがあると報道されており波紋を広げています。

 

10.トランプ一族や大統領幹部の事業も捜査対象に

報道によるとモラー特別検察官がトランプ大統領や大統領選での幹部の会社やロシア事業を捜査対象しているようです。資金や人脈などを荒らしだしているとされ、トランプ陣営はこれに対抗するためもラー特別捜査官の身辺を調査しているともされており、ロシア疑惑の捜査は混沌としてきています。

 

11.白人至上主義団体と反対派の衝突

アメリカ南部のバージニア州において8月12日に白人至上主義団体とこれに反対する団体の衝突がおき、反対派の女性1名が無くなりました。トランプ大統領が白人至上主義者を批判しなかったことから、トランプ氏をアメリカ内で非難される事態となっています。トランプ氏が経済問題に対し産業界と協議するための設置した助言組織を多くの企業のトップが批判の意味で辞任するなど大きな混乱となっています。同事件の後の世論調査ではトランプ大統領の支持率が過去最低となった模様です。

 

12.再側近のバノン氏を更迭

大統領選挙の選挙対策本部の責任者をつとめ、トランプ大統領誕生に貢献したバノン氏が8月18日に解任されました。バノン氏は対中強硬派であり、保護貿易、移民対策を推し進めてきた経緯があります。同士の更迭でトランプ政権が現実路線の政権運営を行えるか注目を浴びそうです。

 

特にトランプ政権に対するロシア関連の疑惑に関しては注意を払っていく必要があるのかもしれません。トランプ大統領は大統領就任決定後もFBIやCIAなどの捜査機関を敵視する発言をしており、今後も政権を揺るがす力は続く可能性もあります。ニクソン氏が辞任に至ったウォーターゲート事件ではのちにFBI副長官がリークを行っていたことが明らかになっています。

トランプ政権は政権そのものが共和党中で見るとマイノリティーであり政策実現には共和党主流派との連携が必須となりますがオバマケア代替案に関する動きを見ても現時点ではこうした実績はできていません。 今後トランプ政権がどう展開するかは予測が難しいですが、世界の政治や経済の中心であるアメリカの政治が揺らぐ事は世界経済にとってはプラス要因とはならない事は間違いありません。

今後もトランプ政権を取り巻く騒動が付いた場合にはリスクオフの動きが発生し株価の下落や債券高(金利低下)といった現象が発生し、住宅ローン金利が低下する可能性も十分にあります。