2014年5月20日の日本経済新聞に2020年ごろを目処として導入が検討されている国際的な金融規制の中で、「自国政府が発行する国債を保有する銀行に対して、自己資本を積むよう求める」という案が浮上しているとの記事がありました。


発端は先般のギリシアの債務危機です。国が発行する債券(国債)も一定にリスクがあり、リスクのある資産を保有するのであれば、保有金額に見合った資本の積み増しを求めることが国際金融の安定に繋がるという考えですね。この規制が適用された場合、あるメガ銀行の15%の自己資本比率が2~5%も下がるという試算もあるそうです。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の合計の自己資本(連結)は33.6兆円、今の自己資本比率を維持するためには、なんと4.4兆円〜11兆円の自己資本増強が求められることになるとの試算です。


まだ、案が浮上した段階のため今後どのように変わっていくかは不透明ですが、仮にこの案が適用された場合、住宅ローンの金利にどのような影響がでるのでしょうか?今、長期金利は日銀の異次元緩和で10年国債が0.6%程度と歴史的な低金利の状態が続いています。

長期金利(10年国債)は、購入したい人が増えれば価格が上昇し、金利が低下します。買いたい人が少なければその逆の動きになります。今は日銀が買い手になることで、長期金利を意図的に低位安定させている状態と言えます。もちろん、永遠に日銀が買い続ける訳にはいきませんので、いつかこの異次元緩和(国債の異例な金額規模での継続的購入)をやめる必要があります。簡単に言うと、この低金利が維持される為には日銀以外に大きな買い手が登場する必要があるわけです。

 

メガバンクに代表される民間の銀行はその買い手を担う最有力(もちろん、今でも大量に購入保有していますが)でしたが、この案が適用された場合、銀行は国債を購入しながら自己資本も増強しなければならず、大きなブレーキになる可能性があります。そもそも日本は人口が減少し、少子高齢化が進んでいますので、日本の一人一人の国民が銀行に預けている預金残高も全体としては減少していくと考えるのが自然です。銀行の国債購入・保有の原資(=預金)が減り、現在保有している国債の残高を維持するのも難しくなる可能性があります。

 

国債を買いたいという人が減る(または売りたいという人が増える)ことで、価格が下落した場合、その金利は上昇する事になります。既に資産がたくさんあり銀行にお金を預けている人にとって、銀行預金の金利上昇はありがたい話ですが、お金を借りている人(住宅ローンを利用している人)にとってはマイナスに働きます。

長期金利が上昇すれば、追随して短期金利も上昇してくるのが一般的ですので、住宅ローンの変動金利も当然上昇する可能性があります。世界的に見ても今の日本は圧倒的な低金利です。仮に他の先進国レベルかそれに近い水準まで金利が上昇するだけでも、変動金利で住宅ローンを借りている人は毎月の返済額の増加は非常に大きくなります。今の低い変動金利でのローン返済でギリギリという家計の場合、返済額の増加に耐えられないという状態になる可能性すらあります。

 

それを意図してのものでは無いと思いますが、ここ数ヶ月ネット銀行の住宅ローンの長期固定金利を大きく引き下げ、30年固定するタイプの住宅ローンでも2%程度の水準で提供しています。また、固定金利の代表格でもあるフラット35も過去最低の金利での借り入れが可能な状態となっています。

確かに毎月の返済額を抑えられる変動金利は非常に魅力的ですが、今の低金利の恩恵を住宅ローン借り入れ期間を通じて受けられて、金利上昇による毎月の返済額の増加のリスクが無い固定金利についても選択肢の1つとして加える、変動金利での借り入れ時も金利が上昇した場合でも耐えられるか家計をチェックするなどを行うと良いでしょう。