平成28年7月12日、安倍首相をバーナンキ前FRB(連邦準備制度理事会)議長が訪問したことで注目を浴びている「ヘリコプターマネー」。

出典;首相官邸ホームページより

そもそもヘリコプターマネーとはどういうものなのでしょうか?ヘリコプターマネーとは中央銀行が紙幣を大量に印刷し、ヘリコプターから国民にそれをバラまくことを比喩しているものであり、世界的にまだ導入例がない経済理論です。

現在、日本やヨーロッパでは大規模な金融緩和を行ってはいますが、景気回復には至っていません。中央銀行が大規模な金融を行って、市場にはマネーが出回ってはいるが、それが一般の国民にまで「給与・所得」という形で届かず、消費活動が喚起されに点に現在の経済政策の課題があります。

これに対し、ヘリコプターマネーは「地域復興券」「○○手当」「○○減税」「○○給付金」などの名目で直接国民にお金をばらまくことで消費を喚起し、経済の好循環を生み出すことを目的としています。

このヘリコプターマネーは、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマン氏によって1969年に提唱され、2003年にバーナンキ氏(当時FRB理事)がこのヘリコプターマネーという理論に言及したことで「ヘリコプターベン」とも呼ばれています。

 

では、仮にこの政策が導入されると我々の生活はどうなるのでしょうか?

まず、貨幣を大量に印刷するため、貨幣の価値が下がり、モノの値段が上がり、大幅な円安が発生します。

特に不動産価格は大きく上昇するのでしょう。

一方で長期金利について、一般的な経済理論であれば日銀の中央銀行としての中立性が失われることで、国債が売られ、長期金利が急上昇するとされるでしょう。

しかし、現状で市場に流通する大半の国債を日銀が購入しているため、売りたくても売る国債が存在していない可能性すらあります。

これを予見するのは先日からご紹介している、三菱UFJ銀行が国債入札特別資格を返上 というニュースです。

国債の流通量が少なく、金利も低いので儲からないというのが三菱UFJ銀行の考え方であり、日本を代表するメガバンクがそう判断するほど今の日本の債券市場は異常な状態となっています。

このため、大幅な金利上昇が発生しない可能性はあります。

ヘリコプターマネー政策の住宅市場や住宅ローン金利への影響としては

・不動産価格が大幅に上昇する

・住宅ローン金利は上昇はする可能性はあるが大幅な上昇はないと考えられる

 

ヘリコプターマネーの実現性ですが、著名アナリストであるJPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、日本がヘリコプターマネーの状況に至る確率を「10年以内に5割超」と予測しています。

 

日銀の追加金融緩和に注目がある中、ヘリコプターマネーという究極の政策に足を踏み入れるのか最大限の注目が必要です。